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一般財団法人ジャパン・マザーミッション機構
角田頼重

いつも通り仕事から帰宅して
玄関の前に立つと見慣れない鍵穴があった。

「はぁ・・・、鍵増やしたか。」

きっと、業者に依頼して増やしたのだろう。
容易にそう思える展開だ。

実際に母親に確認すると、
「これでもう、泥棒は入ってこれない!」
と満足気に新しい鍵を渡してきた。

2つも。

元々、鍵が2つ付いていたので、
これで玄関の鍵が4つになった。
ポケットに入れていると流石に重い。

まぁ、これで安心出来て、
泥棒の話が出てこなくなるのなら、
何とか耐えられるだろう。

そう思う様にして、頑張っていた2日後。

いつも通り仕事から帰宅して、
面倒な4つの鍵を開けて
家に入ろうとすると・・・、

ガンッ!!!

中からチェーンロックが掛けられていた。
勢いよく開けてしまったので、
自分で驚いてしまった。

仕方がないので、インターホンを鳴らすと、
奥から母親が出てきて、
チェーンロックを外した。

「チェーン使うなら、鍵を信用してないじゃん。」
私が指摘すると、母親は
「チェーンもしておかなきゃダメ!入られちゃう!」

結局インターホンを鳴らさないと入れない。
家の鍵を4つも持っている意味が無くなった。

それから数日間は、
ジャラジャラの鍵の束を持ち、
帰宅時にはインターホンを鳴らすという、
謎のやり取りが続いた。

それから2週間程経った頃、
いつも通り帰宅してインターホンを鳴らす。

ピンポーン。

・・・反応が無い。

もう1回鳴らす。

ピンポーン・・・、出ない。

ピンポーン。ピンポーン・・・。

・・・・・。

ピポピポピポピポピポピポ

ピ―――――ン・・・、

ポー――――ン・・・。

・・・やっぱり出ない。

仕方がないので、
鞄からジャラジャラの鍵束を取り出し、
何回かハズレを引きつつ、
嫌な予感と共にひとつずつ鍵を開ける。

ガンッ!!!

やっぱりチェーンロックが掛かっていた。
それなのに、インターホンに反応が無い。

開いた扉の隙間から声を掛ける。

「おーい、いるのかー?」
「聞こえないのー?」

静かに聞き耳を立てて、
中の様子を伺ってみるが分からない。

扉を強く閉めたり、蹴とばしたり、
大きな音を出してみたりするが、
やっぱり反応が無い。

それどころか、続けていると
近所から通報されそうだ。

おそらく、5分以上は玄関の前で
あれやこれやをしていたと思う。

いよいよもって、警察か消防に
連絡をするという選択肢を迫られる。

いや、その前にお隣さんに
協力してもらって、
ベランダからの侵入を試みるか。

という事を考えていた時、
寝起きであろう母親が奥から出てきた。

そして、ため息を吐く私に向って一言。

なんだ、帰って来てたの?
それなら、ピンポン鳴らしてくれればいいのに。