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一般財団法人ジャパン・マザーミッション機構
角田頼重


母の主張により、録画という証拠があったとしても
泥棒がいないという証明にはならなかった。
その後、完全なる惰性だったが、
たまに映像を確認したいという母の要望により、
隠しカメラでの撮影はしばらくの間続いた。

誰もいない部屋の映像を録画し続けているので、
幽霊でも映っていたらどうしようかと思っていたが、
全くもって平和な猫の観察動画になっていた。

主がいない時にも結構走り回っている姿を見れて、
それはそれで良かったのかなと思ったりもした。
月日が経って、いつの間にかお互いに
録画を確認する事が減っていった。
それなりに作業と映像確認は面倒だったし、
既にやる気を無くしていた自分もいたので、
まぁ、いいか。と。
かと言って、泥棒騒ぎが治まった訳では無い。

日々、あれが無いとか。ここにあった物が無いとか。
元々無かった物が無くなったという、
クリア不可能な無理難題を展開してくる。

もしかしたら、この頃から幻覚を見ていたのかもしれない。
母の症状はアルツハイマー型認知症に分類されるが、
幻視や幻聴などはレビ―小体型認知症に多いと聞いた。
泥棒に関してはどうだろう。
実際にいた人物に対して、そういった思い込みをしたのか。
それとも存在しない人物を創り出して体験したのか。
それはそれで凄い能力だと感心してしまう。

アメリカの心理学者であるウィリアム・ジェームズも
人間の脳に対して未知の可能性を示していました。

認知症という恐ろしい疾患。

しかし、考えようによっては、忘れられる事が出来る能力。
そこには無いもの見て体験出来る能力。

こんな事がコントロール出来たらと思うと、
認知症という病気が未来に役立つ日が来るかも知れない!

いや、まて。
脳の中で使えていない部分がある状態と、
脳が委縮してしまった状態を比べるのは違う。

そんな事をあーだこーだ考えていたある日。

突然、母が変な物を持ち出してきた!
なんだそれは!どっから持ってきた!?